ドラマ「下町ロケット」第6話 ーガウディ計画編ー
観ていて苦しい。もう、観たくない。けれど、観たい。
あれから3年。ロケットが飛んで嬉しかった。歓喜した。ドラマなのに、不覚にも涙が出そうになった。財前部長も帝国重工の社長も、元は技術者で、そのプライドとロケットへの情熱が共有されて見事な中締めだった。
ところが・・・だ。第6話は始めからピンチだ。また、プライドの高い若手の技術者が、卑怯なことをした。なぜ、佃製作所に来たのだ!?
自分がしでかした失敗ならば、自己責任で何らかの形で完結させられる。あくまでも自分自身のことなら。
部下や社員を信じて、裏切られる。いや、同僚や友人に裏切られることもあるだろう。良かれと思って言ったことが、相手に伝わらないもどかしさ。・・・精神的にやられる。私は、こういう展開が辛い。
「下町ロケット」は、技術開発の華々しい成功物語だけではなく、人間の根っこの部分を考えさせる。ガウディ編は、アイデアを横取りした野心を抱えた人物たちとの対決になる。
佃製作所が求められる技術は、人工心臓コアハートに関わる人工弁の開発だ。「心臓弁膜症」で苦しむ患者さんを何とかして救いたい。サクラダ工業社長桜田章役の石倉三郎さんが、その病で亡くなった娘さんのことを語るくだりは胸が締め付けられた。ドラマだとわかっているけれど。
3年前に、卑屈な思いでわざと不良品のバルブを混ぜた山﨑育三郎さん演じる真野賢作が、熱い男に変わっていた。航平の思いが本当に伝わった姿を見せてくれている。
ロケットのバルブの時とは違って、人工弁の開発については、航平自身も、桜田社長や北陸医大の心臓外科医市村隼人(今田耕司さん)、真野の申し出を断った。ところが、真野は諦めない。一度、サクラダ工業のある福井へ来てほしい、見てほしいと要請する。佃イズムが受け継がれた・・・「ガウディ」が真野の夢だった。
こういうところが、胸を打つ。佃側の苦しい展開に観たくなくなるけれど、観ないといい場面にも出会えない。だから、観続けてしまうのだ。
桜田社長も市村も真野も、「私たちは絶対にあきらめません」と宣言する。福井を訪れた航平も営業第二部部長の唐木田も技術開発部長の山崎も断ることなどはもうできない。
「娘さんのことがあったからこそ変わる未来もある。そういう悲しみや後悔をプラスに変える力が技術にはある。佃製作所は全力でガウディに挑戦します。」と航平が力強くこたえる。
そうだ。それでこそ、佃製作所。これから、またピンチの連続なんだろう。また、来週から、一視聴者の私もいっしょに苦しむことになるのだ。そして、苦難の末、達成したあとに、涙するのだろう。それを待ってる。
それにしても、次から次へと、佃製作所は難題を抱える。開発にかかる資金や技術上の問題。そして、人との関係。今回のライバルは、小泉孝太郎さん演じる、NASA出身の椎名直之だ。若く勢いのあるやり手で、スマートな印象を与えている。ロケット編にはいなかったキャラクターで、どれだけ航平を追い込むのか、この先の展開が気になる。だから、来週も観る。