Eテレ:青春舞台2015 「うさみくんのお姉ちゃん」は清々しい演劇でした
特に、観たい番組がなかったので、チャンネルをEテレにしました。何やらお芝居をやってるな・・・青春舞台!?
途中から観ました…おやおや、男子高校生、クラスの女子生徒に思いっきり嫌味を言われている・・・二人、顔を見合わせてクスクス、目配せをし合ってクスクス、これみよがしにクスクス…。意地悪なクスクス攻撃で、男子高校生は、お腹が痛くなって、大ピンチです。
第26回全国高等学校総合文化祭で、文部科学大臣賞を受賞した大分県立大分豊府高等学校の「うさみくんのお姉ちゃん」(中原久典顧問作)という演劇でした。
気の弱い男子高校生は溝呂木(みぞろぎ)くん。コミュニケーションがうまくできず、過敏性腸症候群で苦しんでいます。教室には居場所がなく、いつもは保健室にいるようです。
クラスメートの男子高校生2人は、溝呂木くんと接触を持って、なんとか力になろうとしています。もうそれはそれは一所懸命。そのうちの一人がうさみくんです。
どこの高校にもあるような光景です。文字でストーリーの一部分を書き起こすと、とてもシーリアスな演劇に思えますが、前向きな若さが前面に押し出されたコメディータッチのお芝居です。笑いがドカッと起こることもあります。会場が自然に一体となって、男子高校生2人といっしょに、溝呂木くんを励ますところもありました。
そんな中、弟に用事があったうさみくんのお姉ちゃんが登場します。弟に溝呂木くんの女性に対して恐怖感を抱く彼をなんとかするように頼まれたお姉ちゃんは、何が何だかわからないまま、溝呂木くんに話しかけます。
彼女の、人に対して先入観や差別意識のない振る舞いがとても印象的でした。母親が亡くなっているうさみ姉弟の日常も、科白などから垣間見られ、彼女が、母親のように包容力があり、元気で、まっすぐな性格であることが伺えます。この演技をしている女子高生の方は、役ではなく、実話ではないかと思ったほどです。
だから、「アンパンマン」の好きな年下の溝呂木くんは、心を少し開くことができました。コミュニケーションをとることが苦手な人に対して、好きなものを聞き出すことは、接点を持つためにとても大事なことです。うさみくんのお姉ちゃんの見た目のパワーに押され気味だった彼も、彼女の顔がアンパンマンに似ていると言う弟のためによく歌ったという「アンパンマンのマーチ」で、励まされていきます。
やはり、この歌詞がポイントになります。ーー愛と勇気だけが友達さ
これは、戦う時は友達をまきこんじゃいけない、戦う時は自分一人だと思わなくちゃいけないんだということなんです
この歌詞をお姉ちゃんなりに解釈した後、さらにことばを続けます。
愛とは!? 勇気とは!? ーー自分で探し出すしかないと思う
うさみくんのお姉ちゃんは、愛と勇気でたたかうのよ !と溝呂木くんにエールを送ります。
後半、やや「アンパンマンのマーチ」にテーマがシフトしてしまったようなイメージになってしまいましたが、これがきっかけで、溝呂木くんはやっとのことで声を振り絞って、気持ちを吐露することができました。
なんのために生まれて、なにをして生きるのか、答えられないなんて・・・そんなのは嫌だぁ!!!
うさみくんのお姉ちゃんが、あの意地悪な女子高生たちに対して、溝呂木くんへの態度を厳しくたしなめたところは、溝呂木くんが決して一人ではないことを示すための、お姉ちゃんが愛と勇気を体現する場面でした。
友達や担任の先生は、みな彼女のよき理解者。 だから、彼女も強くなれる。溝呂木くんにも味方が何人もできたじゃない!単純に素直に、よかったねと言える演劇でした。保健室に戻っていく溝呂木くんは、保健室に付き添ってくれた男子高校生にこう告げます。
ぼくはやっぱりアンパンマンが大好きです
ぬぬぬぬぬぬ…。