夏支度。扇子の出番です。
7月になったら、扇子をバッグに入れ持ち歩きます。いつもの夏支度。
扇子
団扇(うちわ)は中国などでも使われていたが、扇子は日本発祥のもの。その昔は和歌をしたためて贈られていたというから贈り物にふさわしく、末広がりで縁起がいい。コンパクトでいつでもどこでも使える。一時、扇風機やクーラーの出現で生産高が落ち込んだというが、今や地球温暖化対策のエコグッズ。
扇骨
扇骨は両外側の2枚を「親骨」といい、内側を「仲骨」という。製作は親骨18工程、仲骨16工程にもおよび、職人から職人へ作業が移る分業体制になっている。親骨、仲骨、いずれにも3〜5年育った良質の竹が使われる。扇骨に使うのは皮と中身を削り取った、ほんの一部。9割が廃材とな扇骨は長さ、形、色、光沢が揃っていなければならない。特に一寸の狂いも無く、形を整える作業には熟練の技を要する。おおかたの形になった扇骨1枚1枚に穴を開け、1300枚を1本の細いさし棒に刺し、一枚の板のようにする。それから包丁やノミ、小刀などで削って形を整えていく。この作業は親骨にも仲骨にもあり、作業と作業の間に何度も繰り返される。この後、沸騰した湯で煮て漂白して、天日干しにする。竹の青みをとり、カビが生えないように乾燥するためだ。〈中略〉紙が入りやすいように先を細く削り取り、扇子の種類によって本数を合わせていく。
扇骨…枕草子の定番です。
中納言参りたまひて、御扇奉らせたまふに、
「隆家こそいみじき骨は得てはべれ。それを張らせて参らせむとするに、おぼろけの紙はえ張まじければ、求めはべるなり。」と申したまふ。
「いかやうにかある。」と問ひきこえさせたまへば、「すべていみじうはべり。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』となむ人々申す。まことにかばかりのは見えざりつ。」と、言高くのたまへば、
「さては、扇のにはあらで、海月のななり。」と聞こゆれば、
「これは隆家が言にしてむ。」とて、笑ひたまふ。
かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、
「一つな落しそ。」と言へば、いかがはせむ。
ざっくり、こんなお話です。(敬語表現や古典文法は気にせず、ストーリーを追っています)
中納言隆家(中宮定子の弟・父は藤原道隆)が姉の定子(一条帝の中宮)のところに来て、扇をプレゼントしようと思ってるけど、手に入れたんは、めっちゃ珍しい骨やねん。そやし、それにしょうもない紙ははられへんから、その骨にふさわしい紙を探してますと言っているシーンです。それで、中宮定子が、「それは、どんな骨なん?」と隆家に尋ねます。そしたら、隆家が、それはそれはめずらしいんやで。みんなが「そんなん、まだ見たことがない骨のありようや」っていうてるぐらいやし。ほんまにこんなすばらしい骨は見たことがないでと声高にいうので、(ここですかさず清少納言が登場。もう、賢いことを示さずにはいられへんのでしょうね。彼女の機知に富んだ一言は)
「そんな誰も見たこともない、珍しい骨やったら、扇の骨やなくて、クラゲの骨のようですね」と私(清少納言)が申し上げたら、隆家は、気の利いたセリフやな、自分が言うたことにしとくわと言って笑わはってん。こんなような話は、なんかきまりの悪い話に入れなあかんねんけど、みんなが「一つも書きもらさんと 、書いとかなあかんよ」って言わはるから、どうしたらええねんやろ。どうしようもないしな。
清少納言の、私ちょっと賢いで…という話でした。高校では、この段、敬語をみっちり学習します。強意や打消接続、助動詞や助詞もばっちり押さえる、ちょっと気合いを入れる段です。
久しぶりに、古典。やっぱり、面白いわ。