「池上彰のニュースそうだったのか!!」2014年小学校全国学力テスト1位は秋田県。その理由は…。
全国学力テスト、どんな問題?番組では、平成27年4月21日に実施された算数Bの問題の一部を紹介していました。
すべての問題や解答についてはこちらに詳しく載っています。
問題文はこうです。
たか子さんはおつかいに行きます。パン屋で300円の食パンを買います。
今月、パン屋では、全品10%引きセールをしています。だから、300円の食パンの今月の値段は、270円になります。店員さんが、「今日は特別に、今月の値段の30%を、さらに値引きします。」と言いました。
たか子さんはそれを聞いて、300円の食パンの値段は180円になるのではないかと思いました。しかし、実際の値段は、180円ではなく189円でした。たか子さんは、おつかいから帰って、値段の求め方を考えました。
たか子さんの考え
①今月の値段(10%引きした後の値段)の求め方と答え
求め方 300✕0.1=30 300-30=270 答え 270円
②今月の値段の30%を、さらに値引きした値段の求め方と答え
[求め方 300✕0.3=90 270-90=180 答え 180円 ]
たか子さんは、上の②の300が間違っていることに気付きました。_部の正しい数は、いくつになりますか。また、その数を使うと、②の[ ]は部分はどうなりますか。_部の正しい数を書きましょう。また、その数を使った②の求め方と答えを、言葉や数を使って書き直しましょう。
たか子さん、①で、今月の値段がわかっているんですから、②の間違いだって、気づくことができます。①の計算力が基本の力です。だから、②はちょっとうっかりしたのよね…。むしろ、①ができない…10%引きがわからない…割合がわからない…こちらを危惧します。
教育の現場では、PISAショックから、活用する力の育成を目指して、知識注入を中心とする授業や覚えたことを確かめるテストから、徐々に脱皮することが求められました。全国学力テストが復活した背景にも、PISAは影響を与えています。
全国学力テストのB問題は、物事を批判的に見ようとする力、言い換えると、何がまちがっているかを考えることができる力を試しています。
実施されたあと、都道府県の順位が出て話題になります。
2014年度の小学校の国語A、国語B、数学A 、数学Bすべてにおいて1位だった秋田県。上位に、福井県、石川県、青森県、富山県と、日本海側の県が目立ちます。
それについて、番組では、だいたい次のように解説をしていました。
生活習慣が影響しているのではと言われている。日本海側は、早寝早起きで、朝食をしっかり食べる習慣ができており、授業がしっかり受けられる。
確かに、朝ごはんを食べる率が色塗りされた日本地図で、日本海側の県は、97%の高率で塗られた県が多数。
番組の内容を裏付けるような、調査結果もあります。平成26年度の学習状況調査から、生活児童生徒の学習・生活習慣と学力の関係についても報告されています。
◆次の児童生徒ほど,教科の平均正答率が高い傾向が見られる。【児童生徒質問紙】
○国語,算数・数学に対する関心・意欲・態度が高い
○家庭学習・読書
・学校の授業時間以外での学習時間が長い
・自分で計画立てて勉強をする
・学校の宿題,授業の予習・復習をする
・読書が好き,読書時間が長い,学校や地域の図書館に行く頻度が多い
○学校生活
・学級みんなで協力して何かをやり遂げ,うれしかったことがある
・先生は,自分のよいところを認めてくれていると思う
○基本的生活習慣
・朝食を毎日食べる
・毎日,同じぐらいの時刻に寝る
○メディアとの関係
・携帯電話やスマートフォンで通話・メール・インターネットをする時間が短い【図表1】
・テレビゲームをしている時間が短い
○家庭でのコミュニケーション等
・家の人と学校での出来事について話をする
・家の人は,授業参観や運動会などの学校行事に来る
○社会に対する興味・関心
・地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がある
・地域や社会をよくするために何をすべきか考えることがある
・新聞を読んでいる
・テレビのニュース番組やインターネットのニュースを見る
○自尊意識・規範意識
・ものごとを最後までやり遂げて,うれしかったことがある
・学校のきまり・規則を守っている
・人の気持ちが分かる人間になりたいと思う
https://www.nier.go.jp/14chousakekkahoukoku/summaryb.pdf
基本的生活習慣では、「朝食を毎日食べる」「毎日,同じぐらいの時刻に寝る」があがっています。「早寝・早起き・朝ごはん」を標語のようにしている小学校もあります。
秋田県が第1位である理由については、秋田県の事情が関係しているとのこと。お医者さん不足から、お医者さんとなって、秋田にかえってきてほしいと、地域、学校が一体になって学力向上に取り組んだ結果だと解説されていました。秋田のやり方に学ぼうと、沖縄県では秋田県の先生に来てもらって勉強会をしていることなども話題でした。
全国学力テストは、50年前にも実施されています。その頃は、知識の正しさを確認する問題だったので、成績の悪い子を休ませたり、先生が、机間巡視でそれとなく答えを教えたりと問題だらけでした。だから、中止されたのですが、2000年代、PISAなどの影響もあり、学力不足が懸念され、復活しました。
都道府県順位や平均正答率が公表されると、関係者は気になります。
静岡県は この記事の出る前年度、小6の国語Aの結果が都道府県別で最下位。知事は教育委員会の同意を得ず、独断で公表したことが物議を醸しました。
学力テストが、文科省の思惑とは別に、独り歩きをし始めています。
今日の番組で、私が気になったのは、実は、さっきの小6算数のたか子さんの問題文です。
食パン、300円。えっ、300円!?高級食パンなのね。それが、今日はさらに30%引き!?なんで、なんで、創業祭なの!?180円だと思ってたのに、189円だったら、高く売られた気分になっちゃったのじゃないかしら…。お家に帰って計算し直すほど、気になってるのね…。
例文に使用される名前も、食パンの値段も、リアリティーに欠ける感じがする…それはともかく、教えこむ、覚えこむことから、日本の教育は変わろうとしている、そんな話題でした。
学力政策の比較社会学【国内編】―全国学力テストは都道府県に何をもたらしたか―
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