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ちょっとナオ帳

なんだかまた書きたくなりました。それだけです。

『枕草子』、ずけずけ言ってるけど、雅やかだから、ぎとぎとしてない。

トピック「最近おもしろかった本」について

くさくさした気持ちが消せない時は、古典に手が伸びます。時間を経ているもののほうが、その隔たった分だけ、ゆったりさせてくれます。古文漢文、物語や日記、和歌、漢詩どれにしようか…。ちょっとスカッとしたいので、ずばずばと言ってくれてる、彼女の意見に耳を傾けようか…。手に取ったのが『枕草子角川書店編ビギナーズ・クラシックスです。原文は古語だから、なんとなく全体が柔らかくって、雅やかです。

 

古典で習う定番です。教科書によく掲載されている部分はさておいて、

憎き者の、あしき目見るも、罪や得らむと思ひながら、またうれし。(第261段)

これね、〈うれしきもの〉の一節なんですが、なにがうれしいかっていうと…「憎らしいと思っている相手が、ひどい目に遭うのも、ばちが当たるかもと思いながら、やはりうれしい」と清少納言さんは言っているのです。

 

仕事場(宮中)に、いけ好かない同僚の女房がいたのでしょうか!?そんな人物に対して、「地獄へ落ちろ、あっかんべー」的な気持ちを述べています。そんな思いを抱くことは、また自分も「地獄へ落ちる」ことになるのですが、そんなことわかってるもん、と覚悟しながらも、それでも、相手が苦しむ様子を見ることがうれしいねん、と素直に言い切っています。

 

ほかには、こんなのもあります。

 

人の上言ふを腹立つ人こそ、いとわりなけれ。いかでか言はではあらむ。我が身をば差し置きて、さばかりもどかしく言はまほしきものやはある。(255段)

これね、人の悪口を言うことを怒る人って、わけがわからへんわ、って清少納言さんは言ってます。悪口を言わないではいられへんのよ、言いたいねん!自分のことは棚に上げといて、これほどじれったく言いたいものが他にあるやろか、いや、ないしって、堂々と悪口言いますからと宣言しています。

 

だんだん気が晴れてきました。

  

枕草子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

枕草子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

 

 

教科書の定番や大学の入試問題に関連したものが結構網羅されています。教科書に掲載されているものは、そのほとんどが、何と言いましょうか、お利口さん、優等生的な内容の章段です。この本には、それ以外に、清少納言の隠し切れない嫌悪感や辛辣な評価が描かれた章段も収められています。

 

なんといっても、ビギナーズですから、いきなり古語が並べたてられたり、古典文法の説明があったりするわけではありません。この本は、まず、現代語訳(振り仮名つき)があって、そのあと、原文(振り仮名、歴史的かなづかい)、ところどころ寸評があるという構成です。どの章段から読んでもOKです。

 

千年前の、人間関係あるある、男女関係あるある…。今と一緒!?『枕草子』もそう考えたら、ぐっと身近。

 

〈かたはらいたきもの〉思ふ人のいたく酔ひて、同じことしたる。(92段)

 好きな男子がとっても酔っ払って、同じことを繰り返してしゃべるのは、はらはらして困っちゃいます。酔っ払って、清少納言のこと、好きだよーなんて、何度も何度も言っちゃった…みたいなことですね。

 

〈胸つぶるるもの〉例の所ならぬ所にて、ことにまたいちじるからぬ人の声聞きつけたるは道理、異人などの、その上など言ふにも、まづこそつぶるれ。(145段)

 いつもとは違う思いがけない所で、特にまた、公でない恋人の声を聞きつけた時は当然のこと、ほかの人などが、そのうわさなどをしていても、とってもはらはらどきどきしてしまいますの。予測していないところで恋人の声が聞こえてきます。誰かが私の恋人のことを話題にしています。秘めた関係だから、なおさらどきどき…。

 

〈心ときめきするもの〉頭洗ひ、化粧じて、香ばしう染みたる衣など着たる。ことに見る人なき所にても、心のうちは、なほいとをかし。(26段)

 髪を洗って、お化粧をして、香りを薫きこめて染み込ませた着物を着た時、胸がどきどきします。別に見る人がいない所でも、心の中は、ときめいてとても趣深いのです。なんだか、読んでいる方がどきどきします、この情景を思い浮かべたら…。男子の目なんか気にしてないのよ。色っぽい清少納言さんです。

 

紫式部は、『源氏物語』に見られるように、一文の長さが長く、美意識を表す古語「あはれなり」が多用されています。清少納言は、一文の長さが短く、美意識を表す古語「をかし」を多用しています。そのような点を鑑みると、紫式部がしっとりしたイメージで、清少納言はドライな性格とも言えます。でも、そうとばかりは言えません。

 

古典の授業では、中宮定子や藤原氏の御曹司との、機知に富んだ、ことばのやり取りの場面を多く読みます。原文はちょっと…とおっしゃる方は、たとえば、このビギナーズ・クラシックスのような現代語訳付きなどをお試しください。清少納言の生々しさにもっと出会えますからね。

 

 

枕草子―清少納言をとりまく男たち (ワインブックス)
 

 

 

枕草子 (英文版) - The Pillow Book of Sei Shonagon (タトルクラシックス )

枕草子 (英文版) - The Pillow Book of Sei Shonagon (タトルクラシックス )